2019年7月10日水曜日

短編小説「あいをしてる。」

「あいしてる。」

言ってみたらナナさんは笑った。「うん、好き。」言いながら、僕の頭に手を伸ばした。髪をくしゃくしゃ触った。「どうしたの?ハルト急に。」

いつもの、眠る前の一番穏やかな夜の空気。

「あいしてるって意味をきちんと知って、人に言えるようになってみたいんだよ。そういう人になりたかったんだよ。でもやっぱり、意味なんか分からない。」