チェリー味

息子が風邪をひきまして。

幼稚園時代から忌引き以外では、一度も休んだことが無いという皆勤賞的な生き方をしている鉄人息子が罹患するほどのパワーを持った菌だったらしく、珍しく息子が発熱。

久々に医者に行ったら「最近、マイコプラズマ肺炎が小学校等で流行っている」などと聞いて私はビビりましたけど、息子の状態からしてそこまで悪化してないし肺の音は正常だけど咳が結構出るねということで、色々と多めに薬が処方された。

その中で、シングレア錠が出たのだが。



錠剤が苦手な息子は「2年生のうちは粉にして、3年生になったら粒にする！」と言う主義なので、医師と相談の上で、現在の30kg以上ある体重にあわせると1回分がかなり大量になってしまうんだけども、粉で処方された薬を頑張って飲んでいる。なので、今回も全て粉でとお願いしたのだがしかし、粉薬に紛れて粒が入っていた、なんだこれは。私は初めて見のだが、このシングレア錠はなんとチュアブルタイプだという。

『錠剤が苦手なお子さんでも飲めるように、ラムネのように噛んで食べてもいいし、飴のように舐めてもいいですよ。』

という薬剤師の説明を受け、丁寧に説明書まで入れてもらえた。

子供に分かりやすいよう配慮された、イラスト付き説明書である。サンリオキャラクターのシナモンがモグモグしている、お前も咳が止まらないのか？シナモン。

錠剤が苦手な息子は、このシングレアのチュアブル錠をいぶかしげに睨み付けていたが、一緒にこの漫画を読んで『チェリー味？さくらんぼ味ってこと？食べたい！』と俄然ヤル気を出した。

就寝前に服用との指示があり、チュアブル錠だから水も不用だな、と寝る前の息子の口に1粒放り込んだ。

錠剤を噛み始めた息子は、噛み締めるごとにアゴの動きがゆっくりになり、言葉を発せず、次第に顔つきが獅子舞のようになっていった。鼻息は荒く、小鼻は膨らみ、口は横に広がり、眉間のシワはどんどん深くなっていく。獅子舞！これはまさしく獅子舞！！！

今までに見たことが無いような表情をする息子を見て、やだ可愛い・・と写真撮影したくなるバカ親衝動をぐっと堪えて聞いた。

『もしかして不味い？やばい感じ？？？』

私の語りかけに対し、息子はX JAPANのヨシキのごとく、首を立てにぶんぶん振った。

『水要るか？飲み込めない？』

更に息子は、ヘッドバンギングを繰り返して水を要求。

急いでコップに水を注いで息子の元に戻り手渡すと、息子は水で口腔内の全てを流し込んでなお、獅子舞のような顔をして叫んだ。

『まずい！！！！！』

『こんなのチェリー味なんかじゃない！！！！！』

ご立腹である。

世が戦国の時代ならば、チェリー味と偽って渡して食わせた私など、切腹申し付けられてもいいくらいの怒りようである。（息子は若君という設定において）

先に貼り付けた、あのシングレアチュアブル錠の説明書を読めば誰だって「嗚呼、これは美味しい味の薬だ。」と思うだろう。期待は高まることだろう。シナモンロールのファンシーなイラスト効果もあり、美味しいラムネみたいな薬楽しみだなぁと期待は最高潮だろう。息子にとってチェリー味と言えば、恐らくチュッパチャップスのチェリー味みたいなものを想像していたことだろう。

大喜びしながら食ったせいで、余計に不味さ際立つ状況に、そりゃ顔も獅子舞になるだろうよ。

処方は5日分だったので、以降4日間、息子は獅子舞の顔をしながらシングレアチュアブル錠と戦っていた。

おかげで風邪治った。よかったね。