2019年6月6日木曜日

短編小説「ホクロ」

私達が、お互いの肌を自由に触れる様な距離になった頃。彼がある日、私の顔のホクロを指で優しく押さえて、にこにこと嬉しそうに笑った。初めは彼が何をしているのか理解出来ずにいた。私の口元の、その場所を指で押さえる彼の手に触れながら「何??」と尋ねたら、彼は嬉しそうに弾んだ声で

『ホクロ。』

と答えた。