※過去にどこかで公開していたものの再掲です。
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ASH:「ねぇ、その”リカリィポンチィ”?ってなにぃ?」
昼下がり、白い机の周りに椅子をならべて一食290円の仕出し弁当を食う若者達が5人。私の前には嫁入り直前のあやや嬢、右隣にはASH。ASHの向いにはF氏が座り、その2人にはさまれるお誕生日席には影光氏。
F氏:「ん?なにぃ?」
ASH:「それそれ、そのF君の着てるTシャツ。それ何処の?胸の所になんて書いてあんの?」
今日の弁当のおかずはよくわからない野菜のゴッタ煮で、おばあちゃんの味がする。もぎゅもぎゅもぎゅ。もぎゅもぎゅもぎゅ。おかず2品目は焦げた焼き魚で、こちらもなぜかおばあちゃん。もぎゅもぎゅもぎゅ。溢れんばかりのお婆ちゃん味を噛み締めながら、私は隣に座るASHとその向いに座るF氏の会話を聞いていた。
F氏:「ああ、これか。これはねぇ・・・・」
F氏、身にまとった紺色のTシャツを、丁度乳首の部位でつまみ上げるとうつむいて、左胸の部分に白い文字で印刷されているヨーロピアンな筆記体のアルファベットを、少し目を細めて愛おしそうに眺めて、こう言った。
F氏:「イカレポンチ」
その他全員:「はぁぁぁ??????」
23の男性、某インターネット関連会社に勤める会社員。その彼の胸には惨然と輝く「Ikareponchi」の文字。
全員:「なんで、なんでイカレポンチなの、ワハッハハッハハハハ!!!!」
運悪く、麦茶を口に含んでいた私はF氏のその一言に鼻から吹き出しそうになる麦抽出液を必死に口内にとどめようと目を白黒さていた。
ASH:「うははははは!そんなの何処で買ったの?」
F氏:「違うよ、買ったんじゃないよぅ~。これオーダーで作ったんだよぅ~。」
その他全員「わはははははは!!!なんでわざわざ作ったのにイカレポンチなの!!」
F氏:「高校2年の頃に演劇部関係の人とみんなで作ったんだよねえ。こないだ部屋片付けたら出てきたから『これいいじゃーん』って思って着てきた。」
白い歯を輝かせて、懐かしそうに笑うF氏。
午後、F氏はTシャツの上にYシャツを羽織りスーツに着替えると「いってきまーす」と爽やかに営業先へと向かっていった。スーツの下には、イカレポンチ。左胸には、イカレポンチ。
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